1.仲介実務

権利調査 公道のはずが私有地?

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これは法務局での物件調査の際に僅かに手抜きしたことにより生じた痛恨のミスである。かなり特殊なケースではあるのだが、基本を忘れたことによりトラブルが発生した典型的事例だといえる。中途半端に知識や経験がついた際に起こりやすい例として紹介しておこう。

対象地は図の黄色の部分、面積700坪前後の空き地。前面は立派な町道で、数年前に整備(拡幅&舗装)されたのは現地を見れば明らかであった。また元は農地であったためか、地番の枝番が三桁にもなっていた。

法務局での調査においては、まず公図を閲覧し、(コンピューター化以前だったので)登記簿謄本の閲覧を請求した。図では示していないが隣地も含めると多くの筆数となり、かつ地番もかなり飛んでいた。適当に地番をチョイスして登記簿を4~5冊閲覧請求するとともに、地積測量図の閲覧も行った。但し、この際に図のピンクの箇所だけが地番が飛んでおり閲覧対象から漏れてしまった。

図のブルーの部分は全て町の所有であり、既に町道となっている。これは地積測量図からも明らかであり、かつ現地には町の設置した境界標も存在した。そこでピンクの部分も当然町道であると判断し、この部分の閲覧を省略してしまった。実はこれが後日大問題となってしまったのである

この土地は過去に所有権を巡る係争があり、裁判によって権利が確定したものであった。この点については判決文の謄本を取り寄せ念入りに確認していたつもりだったが、重大な見落としがあった。ピンクの部分は道路拡幅に際して一旦は町の所有となったが、その際に買収に応じたのは裁判で敗訴した側であり、判決が確定した時点で買収の契約自体が取り消されていたのである。

この結果、ピンクの部分は現況が町道であるが所有権は個人(本件依頼者)のままという状態となっていたのである。売買の際に解決してしまえば済んだのだが、本件が発覚したのは買主が開発行為の申請を行おうとした時だった。本件を解決することが開発許可の条件となるのは当然である。ところが、依頼者は裁判中に町が相手側に加担したことに不快感を持っており、この部分の町への再譲渡(又は寄付)には容易に同意しなかった。

このケースもミスが発覚した時点で私は既に新しい任地へ転勤していた。大ピンチかと思われたが、幸運にも依頼者の親族が新任地の近くに居住しており、そのルートからどうにか相手を説得することができた。町も過去の非を認め、当時の買収価格に金利相当額を上乗せした金額で買収してくれることとなり、漸く解決に至ることが出来たのである。

このミスは、直接的には隣地(道路部分)の閲覧を省略したことが原因である。さらに付け加えるなら、裁判がらみの物件についての知識、経験不足もあげられよう。いずれにしても僅かな手間を惜しんだことが大きなリスクを生んでしまった事案であった。

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境界(その5) 測量士まかせで大失敗

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これは不動産仲介に従事して1年半くらいの頃にやらかした大失敗だ。直接的にミスをしたのは他人(測量士)なのだが、仲介をするからには全てに責任を持たねばならないということを痛感させられた案件である。

物件は図の黄色の部分。四隅のポイントははっきりしており、特に境界で揉めるとは思われなかったので、通常の実測売買とした。測量は売主の意向で地元の測量士に依頼したが、結果としてこれが誤りであった。

測量には自分も立会い、測量士に隣地の境界確認印を揃えてもらうことを確認した。そして出来上がった測量図はパソコンもあまり普及していない当時としては大変きれいな図面であった。図面の余白部に立会人の署名捺印欄が設定され、そこに肉筆で書かれた署名がずらりと並んでいた。私としては測量士がここまで念入りに作ったものに誤りがあるとは思われなかったため、碌にチェックもせずに残金決済の準備を始めてしまった。

ところが、この署名欄には図のピンクの部分の所有者が抜けていたのである。いい加減な話もあったものだが、チェックをしなかった自分の責任である。このことは、物件の引渡しも完了し、買主が塀を建替えようとして隣地と協議を始めた際に発覚した。ピンクの部分の塀については塀の中心が境界であると判断していたが、その隣地所有者は塀の外面が境界だと主張したのである。これも言い掛かりに近い話なのだが、境界確認をしていないのだから一方的に否定することも出来ない。当然、塀の工事が着手できない事態となった。

さらに運の悪いことには、その時点で私は別の支店に転勤していたため自分で事態の収拾を図ることも出来なかった。話が拗れて責任問題となれば、責めは当然自分が負わざるを得ない。新任地でも前任者から引継いだトラブルで苦しんでいた自分としては、正に進退きわまってしまった。

結論を言うと、このトラブルは買主(デベロッパー)が解決してくれた。クレームのついた部分は、仮に相手の言うことを100%認めたとしても面積的には僅か0.1坪程度である。買主がこれに見合った現金をポケットマネー(近隣対策費?)で支払って解決してくれたらしい。お蔭で私も責任を問われずに済んだ。

これ以降、測量士や司法書士に依頼した仕事についても必ず自分でチェックするようになった。すると意外に細かいミスがあるので驚かされた。酷いのになると、権利証の所有権移転の登記番号と抵当権設定の登記番号が入れ替わっているなどというものまであった。これは司法書士というより法務局のミスかもしれないが、すぐに訂正しないと後で大問題となる場合がある。本件のようにすぐ発覚するミスもあるが、気づかずに見過ごされているミスもあるに違いない。仲介者としての責任を負う以上、他人任せにしてチェックを怠ってはならないということを教えてくれた事案であった。

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境界(その4) 擁壁がある場合の境界には注意 (続き)

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B.上段土地の擁壁の端が境界となるケース

大規模な造成地では滅多に見ないが、地主が土地を切り売りしていったような場所では意外に多く見られる。崖を避けて上段の平坦地部分を切り売りし、残地となった崖と谷間を後で一括処分するようなケースである。開発行為を逃れるために行われることが多いため、擁壁が既存不適格(極端な場合は不法造成)であることも多いので注意せねばならない。

直接扱った案件ではないが、次のような事例を見たことがある。物件は建物裏手が崖となっている谷間の倉庫。崖はかなりの急勾配で、しかも3種類の異なる擁壁工事がなされている。見るからに怪しい佇まいであり、開発行為の基準に適合する擁壁とは到底見えない。もし擁壁をやり直す必要が生じれば莫大な費用負担が発生するのは容易に推定できた。

そこで担当者が建物裏手に回って境界確認を行ったところ、擁壁の手前に立派な境界標を確認した(ケースAで言えば、本物件が下段の土地に該当)。本物件は現在の基準では開発行為の対象となるが、敷地に擁壁部分が含まれなければ当然ながら擁壁の再工事等は必要ない。すぐさま販売活動を開始し契約に至った。

ところが契約後に本測量を行ったところ重大な事実が発覚した。3種類の擁壁の内1つについては境界が崖の上にあったのである。ロッククライミングでもしないと登れない崖であるから当然下からでは境界標は見えない。その点は同情の余地があるが、このような特殊な物件については契約前に少なくとも仮測量くらいは実施しておくべきだった。開発のコストが大幅に上がり、当然ながら買主からクレームがついて大トラブルへと発展するところであった。

結論を言うと、本件は無事(?)合意解除となったそうである。幸か不幸か、上の問題を遥かに超える大きな瑕疵が見つかり仲介者の責任は問われずに済んだらしい。本件は単にアンラッキーだっただけだと思われる人もいるかもしれないが、何も起こらずに終わるほうがラッキーだと考えるべきである。怪しいと思われた内容について確認の手間を惜しむことの危険性を知るべきであろう。

C.擁壁の中間が境界となるケース

これは超イレギュラーケースのような気もするが、実際に遭遇したことがあるので一応ご紹介しておきたい。物件は大手が分譲した湘南の造成地。南傾の緩斜面で区画ごとの段差は30~40センチ程度、擁壁というより土留めに近い。現地調査を行ったところ、境界標は図のCのように設置されていた。

まあ擁壁というほどのものでもないので、隣接土地所有者で共同管理しなさいという意図のようである。その意図が正しいかは分からないが、ただ言えることは境界上に塀は建てられないという事実である。当時まだ新米だった私は悩んでしまった。

本物件は更地で、上段・下段の土地は既に家が建っている。上段の家は自分の敷地内に自己の負担で塀を設置していた。一方、下段の人は自己の負担で上の段(つまり本物件)に塀を建てていた。厳密に言えば、これは下段土地から本物件への明らかな「越境」である。しかし、わざわざ擁壁の下段に塀を建てるのは馬鹿げており、上段に建てるのが自然である。本件でも両者了解の上で塀を建てており、「越境」といっては下段の人がかわいそうである。

しかし何せ新米だった私は、「越境」用の固い文面の念書をもって下段の所有者を訪問した。予想通り文面についてクレームがあり、粘ってはみたものの柔らかい文書に書き換えさせられてしまった。何とか印鑑をもらえたのは幸運で、万一下手に拗らせていたらどうなったかと思うと冷や汗ものである。境界については教科書に載っていない様々なケースがあり、自分の頭で考えて臨機応変に対応せねばならないと考えさせられた事例である。

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境界(その3) 擁壁がある場合の境界には注意

仲介において地境に擁壁がある場合は特に注意を要する。裁判沙汰になるようなトラブルになるケースには擁壁がらみのものが多いように思われる。私が経験したいくつかのケースを踏まえて、擁壁がある場合の注意点をあげてみよう。

まず、擁壁と境界の位置関係には図のAからCのような3つのパターンがある。

A.下段の土地の擁壁基礎の末端が境界となるケース

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これが最も一般的な境界の決め方である。一定規模以上の造成地等では基本的にこうなっているケースが多い。上段の土地の地盤を支えるための擁壁であるのだから擁壁も上段土地に帰属するわけだ。
このケースで問題となるのは、地上に見えている擁壁の末端と地中にあるその基礎部分の末端では位置が異なることである。その差は最小でも数センチ、極端な場合は1メートル超にも及ぶ。擁壁直下に排水溝を設置しているような本格的なものを除けば、この地中部分の表面は下段の所有者が自己所有地と一体として「越境」利用しているケースが多い。境界確定作業において、この部分の所有権が上段にあることについて下段の所有者が納得しない可能性がある。

私が遭遇したケースでは,この「越境」部分に簡易物置が設置されていたことからトラブルとなった事例がある。地表の擁壁面と境界線が約1.5M乖離している珍しい事例で、下段所有者は境界については渋々同意したものの、物置の撤去を迫られて切れたらしい。途中から引継いだ案件であったため当初の経緯は不明だが、契約したものの境界確認書が貰えず残金決済ができない状態であった。私が着任した時には、弁護士立会いの下で強制執行専門業者を使って人力で物置を撤去する、という大事件に発展していた。

このような場合には境界確定は重要であるが、些細な越境について下段所有者と揉めることは余り意味がない。越境されている部分については上段所有者は現実的に利用できない上、上段土地の効率を高めるために擁壁を改良しようとすれば下段所有者の協力が不可欠だからである。さらに擁壁をつたっての下段土地への雨水の流入、落ち葉の落下等を考慮すれば、下段所有者を一方的に責めれる立場ではない。普通ならこんな無意味なトラブルを起こすことを買主は要求しないはずである。

実はこのトラブルは買主が転売目的であったことに起因していた。「越境」という瑕疵を強引に取り除こうしたわけである。都内の高級住宅地の代名詞とされる「田園調布ロータリー内」の超高額物件であったため、物件を完璧な状態にしたいとの気持ちも分からないではない。しかし些細な越境を解消するために重大な近隣トラブルを起こすのは本末転倒というしかない。ひょっとすると越境されていることをネタに購入価格を引き下げようとしていたのかもしれないが、今となっては真意は不明である。

これは重要事項説明が不十分であった典型的事例である。当面の越境状態を同意の上での売買であったなら事はもっと平穏に終わったと思われる。将来の建替え時に物置を少しずらすと言うのなら下段所有者もここまで態度を硬化させることは無かったであろう。往々にして買主が業者であると重要事項説明を簡単に済ませがちではあるが、エンドユーザーに対する場合と同様、常に細心の注意を払わねばならないことを教えられる事例である。

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(区画整理)仮換地の区割りは変更できるか (続き)

2) 従前地の机上分筆は不可だが・・・

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これは区画整理の仮換地(指定済みだが着工寸前の状態)を買収しようとした際に遭遇した事例である。

今回も大規模な案件で、対象地の所有者は図の2街区全体を仮換地として指定されていた。こちらが買収したいのは右側の街区で1000坪を超える。所有者の承諾も得たうえで区画整理組合へ調査に出向いたところ、大きな問題が存在していることが判明した。

従前地は広大だったが僅か2筆(仮にAとBとする)である。(ひょっとすると国土調査が実施されて合筆されたのかもしれないが、経緯は不明) その2筆に対する仮換地は図のAとBであるが、見て分かる通り、従前地Aの仮換地が左右の街区に分かれて指定されていたのである。換地処分が実施されるまでは従前地の登記簿しか存在しないため、これではどちらの街区も売買する際に多大な不都合が生じてしまう。

これをもって区画整理組合の明確なミスとは言えない。しかしながら、本事業は本土地所有者の積極的な協力があって初めて可能となったものであり、かつ自らの従前地を前倒しで提供し、自分の仮換地の収益開始まで1年超も我慢しているという事情があった。そんな地権者に対しては、あまりに配慮のない仕打ちであろう。

実はこの時点で本件土地の売買は無理かもしれないと感じていた。何故なら、従前地を便宜上机上で分筆して仮換地指定を変更することはできない、との判例が確定していたからである。既に形状も定かでない従前地を図面上だけで分筆するという行為自体が、実体の無い法律行為であるからということらしい。
こうなると換地処分がなされるまで通常の登記はできないことになる。保留地売買の手法に準じて組合との協定書等により所有権を保全することは可能かもしれないが、不動産のプロならともかく、普通の法人に理解してもらうのは至難の業である。

落胆しつつも、念のため善後策はあるかと尋ねたところ、組合も後から不備に気づき、対応すべく現在検討中だとの回答であった。今「秘策」を練っているのでもう少し時間が欲しいとのことだった。秘策などあるのかと半信半疑ながら、後日の再訪を約してその場は済ませることにした。

後日、その「秘策」が明らかとされた。なんと従前地がそのままの形状で残っており、それを正々堂々と分筆すれば判例に抵触しないというものだった。実は本事業地内にもう1社大規模な土地所有者がおり、そこが対象となる従前地をそのままの形状で使用収益していたのだそうだ。なんだか狐につままれたような話ではあるが、法務局をはじめ全て根回しはできているので大丈夫との説明であった。かくして日を改めて従前地の測量と分筆が粛々と行われることとなった。私も含めて関係者が立会いの元、測量士がピンを打ち込んで「分筆」作業は完了したのである。

このピンに境界標としての意味があるかは甚だ疑問ではあるが、本件取引に対しての効果は絶大であった。すんなり分筆登記も完了し、前述の事例とは異なり減歩率の見直しも不要であったことから、複雑な行政手続もなく仮換地の再指定は完了したのである。

(補足)
以上の2つの例は、多分に幸運が重なった稀有な例である。これをもって区画整理地内でも無理が通るとは思わないでいただきたい。むしろ普通の土地にはない独特なリスクや制約があることを知ることがの方が先決かもしれない。

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(区画整理)仮換地の区割りは変更できるか 

都内で仕事をしていると実際に区画整理中の土地を扱うケースは殆ど無いかもしれない。宅建の試験勉強で区画整理についても学ぶが、自分で扱ってみないと理解できないことも多い。しかし地方都市や新線が開通予定の地域等では頻繁に出くわすことになるため、やはりプロなら相応の知識は必要である。

仮換地の使用収益が開始されており、その面積も手頃で分譲地風に仕上がっているような単純な物件を仲介することはさして難しくない。特に問題となるのは、仮換地の区割りが売買に適しておらず、かつ区画整理事業が長期化して換地処分の時期が見えないような案件である。

一般論としては、そのような案件は触らないほうが賢いだろう。不動産業者がいくら努力しても、法的にできないことはできないからだ。しかし、ごく稀にではあるが行政の協力によって解決することもある。そこで私が実際に経験したそんな事例について紹介してみよう。

1) 区画整理事業の事業変更を行い分譲したケース

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これは普通なら絶対不可能であるが、区画整理組合の特殊事情により実現したケースである。対象地は大型物件で減歩後の面積でも1000坪程度。周辺は普通の住宅地であるが、本件の仮換地は1団の土地として1区画とされていた。

駄目もとで区画整理組合へ相談に出向いたところ、本件は市が主導して実施している区画整理事業であるが、地権者の抵抗により事業が超長期化しており、特に本年度については事業進捗率が低下して苦境に立っているとのことが判明した。それ故、事業進捗率を上げるためなら協力は惜しまないとの言質を得ることができた。都合の良いことに対象地は図のように従前地と仮換地がほぼ重なっており、取付け道路も寸前まで開通していた。つまり従前地と仮換地が重さなった部分に限定すれば前倒しで開発できる可能性が生じたのである。しかし、地域特性から言って一団の土地として売却することは絶望的で、分譲地として区割りする必要があった。

この場合、従前地を分筆して仮換地を再指定するだけでなく、一部道路を新設する必要が生じるため区画整理地全体の減歩率まで修正せねばならなくなる。通常なら仮換地の再指定すら困難であるのに、この一連の作業は絶対不可能と思われた。しかし、何と組合は了承したのである。

道路の扱いは次のようなものだった。まず新設する道路に対応する面積を分筆し組合に寄付する。その道路工事は組合が行うが、それに要する費用は開発者(本物件の買主)が負担し組合に寄付する。これにより組合には直接的には追加の資金負担は発生しないため、全区画整理地について減歩率の再計算を行い、さらに縦覧等の手順を踏んで市の承認を受けるという筋書きである。

まあ組合も思い切ったことを引き受けたものだが、当方としては願っても無い対応である。そこでハウスメーカー系の開発業者をセットして売買を仲介することができた。通常の役所仕事だと時間が掛かりがちだか、本件に関しては役所の都合で驚くほど早く仕上がり戸建用地として分譲することができたのである。

(以下次回)

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(その他-1) 農業委員会へ始末書を出す?

市街化区域内農地は原則として農業委員会への届出が受理されれば転用できる。現所有者が転用する場合は農地法第4条、所有権移転を伴う場合は同法第5条に基づく届出となる。ここまでは宅建試験の基礎の基礎であるから不動産業者なら間違える人はいない。ここで敢えて注意するとすれば、役所の「農業委員会」の窓口に申請書を出せば済むのではないということである。農業委員会の定例会で議題として上程され、その議事録に基づいて「受理証明」が発行されてはじめて不動産実務上は「受理」されたことになるのである。受理証明が無ければ所有権移転の本登記は絶対できないが、初心者はこれを理解せずにスケジュールを立てようとして大恥をかくことがよくある。

私は上記の内容は十分理解しているつもりだったが、或る時、気楽に4条申請を出しに行った農業委員会の窓口で「始末書を出せ」と言われて大いに困惑したことがあった。物件は市街化区域内の住宅敷地で10筆くらいに筆別れした土地である。測量ついでに合筆してしまおうとしたのだが、理由は不明だがその中の1筆が「畑」となっており合筆できなかったため、まず4条申請で農転してしまおうということにした。当然問題なく受け付けてもらえると思っていたのが、何故か窓口の初老の担当者は「農地でない土地の届出は受け付けない」と一歩も引かない・・・。

最初はさっぱり理解できなかったが、我慢してよく話を聞いてみると先方の論旨はこうであった。

農地法上の農地とは農業委員会の台帳に記載されたものである
法務局の台帳(登記簿?)に「畑」と記載されていても「農地」ではない
③当然、農地法は及ばないので所有権移転登記も自由にできる筈である
④ところが法務局は自らの責任回避のため農業委員会の受理証明を要求する
⑤当委員会としては本来「農地」でないものの申請を受け付ける謂れは無い
⑥どうしても受け付けてもらいたければ「始末書」を出せ

言われてみれば至極尤もな主張である。それまでは農転申請を登記手続きに付随する一種の「作業」のように考えていたが、この話を聞いて目が覚めた思いであった。早速反省して上記内容に添った「始末書」を作成し、後日丁重に持参したことは言うまでも無い。

この経験により「農地」というものがかなり理解できたと思う。それまでは単に手順だけを丸暗記していた諸手続きに関しても、その理由について勉強する契機となった。後年になって大規模な物流団地の開発案件に関った際にも、この経験は非常に役に立ったものである。今では、あの時の農業委員会の窓口の方に大変感謝している。

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境界(その2) 公図の「嘘」

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今回も青地がらみのケースである。公図上は対象地(黄色部分)に青地が突き刺さったように含まれていた。この土地をマンション用地として売却することを検討していたため、当然ながら青地の払い下げの準備を行うこととした。

この際、公図上の地形が実際の土地と比べて妙に大きいことに気が付いた。実際の地形は点線以下の部分とほぼ合っている。それなら青地が含まれず都合が良いが、公図の地形は当てにはならないというのは常識である。また、ちょうど公図の境目に近い部分でもあったので地形が不正確なのだろうと推測された。よって現所有者も私も当然青地が本件土地に含まれているものと考えていたわけである。ところが作業を依頼した測量士からの報告は又々驚かされるものだった。

道路を挟んだ反対側の青地の立会いは過去に実施され境界等は確定していたが、それは本件土地北側境界より10メートルも北側(図では上側)だったのだ。つまり公図を見た第一感の通り、本当の境界は点線部分が正しかったのである。この公図は一体なんなのであろうか

所有者からの聞き取りによると、本件土地は借地を地主から買い取ったものだということであった。思うに、旧地主は残地に青地が含まれると面倒なので公図を適当に「分筆」して売却したようである。いい加減な話もあったものだが、その後北側の隣地も第3者に売却されており、今となっては真相は藪の中といった状況であった。

この状況は個人住宅として使用し続けるには問題ないが、分譲マンション用地としては致命的である。北側隣地所有者の同意を取り付けて公図訂正するのが筋であるが、その場合は北側隣地に青地が食い込むこととなる。普通に考えて簡単にいくとは思われない。そこで当然ながら不動産業者としては北側隣地も買収してしまうことを画策し、その現所有者と交渉することにした。

結論を言うと買収は失敗した。しかし、隣地所有者は東側道路をセットバックして拡幅することを条件に公図訂正を承諾してくれたのである。望外の結果とはこのことであろう。承諾さえしなければ、労せずして南側のマンション建設を阻止できるのである。当方が如何に公図の不備を証明したところで、隣地の承諾なくしては公図訂正は不可能だ。

これには、①隣地所有者が相談した不動産会社が非常に紳士的であったこと、②この時点で内定していた買主が地元では絶対的な信用を得ている企業グループに属していたこと、の2つが寄与したと思われる。この取引をセッティングしてきた自分としては、正に「不動産屋冥利に尽きる」場面であった。

この結果、一時は取引自体が困難と思われた土地は、(一部)分合筆、公図訂正、地積更正等を経て完璧な「マンション用地」に仕上げることができた。加えて実質的に近隣対策のかなりの部分も済ませるというオマケ付である。後日談ではあるが、建築確認から施工も全て順調に進み、当然のように即日完売したとのことである。不動産というのはうまくいく時はこんなものなのかもしれない。

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境界(その1) 隣々(?)地からの越境

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不動産の仲介をしていると様々な問題に直面することになる。取引の障害となるような事柄も多いが、一方で大変勉強になることも多い。そこで私が過去に経験した面白いケースについて紹介していこうと思う。

物件は賃貸アパート。客付けは後輩がやっていたが、彼は初心者だったため契約関係を指導してやってくれと上司から依頼があった。現場を見ると物件と隣地の民家の間には塀がなく、民家の炊事場にバラック小屋みたいな部分が増築されてこちら側に突き出している。この増築部分は見るからに怪しいが、ルーキーの担当者は特に調べておらず詳しい説明は受けられなかった。

後輩が取り出した公図で確認すると隣地との間には青地(里道or水路?)があることになっていた。青地と自分の土地の境界が明確でないため互いに青地に越境して適当に「共用」しているのだろう、と最初は想像した。これなら塀がないことも説明がつく。但し、この場合は官民査定の必要が生じるので面倒ではある。まあ後輩の教育にはなると気を取り直して、測量士に予備調査を依頼することにした。

測量士からの報告は少し予想外のものだった。①官民査定は実施済みで境界確認の印も全て揃っていた、②その図面に従って現況をチェックすると隣地所有者は青地を越えて当方にまで越境していることが判明した、とのことである。隣地からの越境というのはよくあることだが、隣接しない土地からの越境というのは聞いたことがない

通常、越境状態を簡単に解消できない場合は、境界確認書を取り交わした上で再建築等の際に越境状態を解消する旨の念書を出させるのが一般的である。念書といっても気休めみたいなものだか、取り敢えず当方の土地利用に障害がなく、かつ越境していることに相手側の悪意がないと判断できれば、これは止むを得ない解決法といえる。

しかし本件では境界は既に確定しており、役所は再立会いは原則認めないため隣地ですらない当事者同士で立ち会っても余り意味はない。反面、国有地には時効取得が認められないため、越境状態を放置しても権利の主張をされる懸念はなく、再建築時に再度越境してこようとしても今度は役所へ通報すれば簡単に阻止できる。つまり上記の念書の内容は、何もしなくても担保されているわけである

そこで上記内容を重要事項説明書に記載し、念書等は省略することとした。買主が理解のある人で、また本物件の駐車場利用に際して当方も青地部分を実質的に「越境利用」していたため、余り境界のことで「隣々地」とは事を荒立てないほうが良いとの判断であった。この解決策には異論のある人もいるとは思うが、かといって絶対的な正解というものもなさそうである。

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