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DCF法についての誤解(その1)

単なる計算手法
DCF法とは、将来のキャッシュフローを現在のキャッシュ(NPV)に換算することに過ぎない。一見すると難しそうな計算式も、単にこれを定式化しただけのことである。DCF法とは単なる計算手法の名称であって、それ以上でも、それ以下でもない。巷間で「DCF法の有効性」に関して議論があるが、これは正しくは「DCF法の使い方の有効性」についての議論と言うべきであろう。

投資家にとってのDCF法
まず投資家が投資判断に用いるケースを見てみよう。プロの投資家であればIRRを意識するのは当然であり、IRRを管理する手法こそDCF法に他ならない。私の知っている米系投資銀行は、投資判断に際しては(出口戦略を含めた)デューデリジェンスに基づいて求められたNPVを参考にし、購入後は実際の購入価格から彼らの期待IRRを達成するのに必要な売却価格・スケジュールを再計算して業務管理に利用する、という方法を取っていた。これはDCF法を実務に応用した典型的なケースである。

経済理論としてのDCF法
次に投資家の行動を論理的に説明するためにDCF法を用いるケースがある。経済学の世界では投資行動を理論的に定式化する手段としてずっと以前からDCF法を使用してきた。まず経済学におけるDCF法のこのような使用法が先にあり、後になって投資家がこれを実務に応用するようになったと言えよう。(但し、経済理論ではDCF法で具体的な価格を算出することは有り得ない)

不動産鑑定におけるDCF法
これに対して、DCF法を「適正な不動産価格」を算出(=鑑定評価)するために用いるケースがある。これは前の2つのケースのような投資計画の「立案手段」とか「行動仮説」といったものではなく、DCF法で市場価格を推定してしまおうという大胆な試みである。この試みが意味を持つためには、その計算を正当化するに足る「的確な」収入予測と「適正かつ合理的な」割引率というものが存在することが大前提となるが、もしそんなものが存在しない場合は意味をなさない。

鑑定が問題?
DCF法の有効性について議論の余地があるとすれば3番目の使用法であろう。前の2つが正しいから3番目も正しいというのは誤解であり、反対に3番目が信用できないからDCF法自体を否定するというのも誤解である。そこで次回はこの3番目の使用法について詳しく見ていこうと思う。(その2に続く)

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