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DCF法についての誤解(その2)

DCF法が注目された背景
不動産鑑定の世界では、収益不動産の価格評価について「取引事例比較法」と「収益還元法」という2つの手法が競合してきた。バブル期までの地価上昇期においては取引事例比較法が優勢であったが、バブル崩壊で地価が大幅に下落したことにより取引事例比較法への信頼は失墜し、収益還元法が優勢となった。同時期に不動産流動化ブームが到来し、それに伴い収益還元法のより新しい手法(?)としてDCF法が注目されることとなった。その後のミニバブル的状況においてREITや投資ファンドが市場の主役となったことにより、彼らが実際に使用しているDCF法が鑑定の世界でも主流になった。しかし、今回の金融危機による地価下落でDCF法に対する信頼も揺らいでいるのが現状である。

収益還元法との混同
ここで注意すべきことは、収益還元法=DCF法 という関係は誤解だということだ。確かに数式は似たようなものかもしれないが、意味合いは全く異なっている。元々、DCF法は将来予想の変化により現実価格が敏感に変動することの説明に用いられてきたものである。DCF法は将来の予想価格がNPVに反映されるため、計算期間が短期であれば将来の予想価格から大きな影響を受けざるを得ない。バブル崩壊後の地価低迷時においては、価格水準が十分に下落したことにより相対的に賃料による収益率が上昇し、かつキャピタルゲインが全く見込めない状況であったため、結果的に収益還元法とDCF法の結論がほぼ一致したということにすぎない。このことは、その後の地価反騰局面で収益還元法の適用が困難となると、価格上昇トレンドを織り込めるDCF法が好んで用いられるようになったことを見ても明らかである。

妥当性の根拠とは
要するに、DCF法とは将来予想と割引率の設定によりどんな結論でも引き出せてしまう手法なのである。価格形成プロセスを説明するのに使用するには全く問題はないが、「適正な」価格を計算しようとすれば「的確な」収入予測と「適正かつ合理的な」割引率というものが存在しないと成り立たない。もし市場価格に合わせて予想や割引率を恣意的に調整するようなことがあれば、それは単なる数字遊びと言わざるを得ない。

本家アメリカでも疑問視?
アメリカでREITが誕生した当初、REIT価格は株式等とは異なり安定的だとする説があったらしい。もしそうであれば、REIT価格と配当率を参考にして「的確な」収入予測と「適正かつ合理的な」割引率を推定することが可能だったかもしれない。しかしアメリカにおいて既にREIT価格の暴落が幾度か発生したことにより、この仮説は誤っていたことが証明されてしまった。

市場参加者を見れば・・・
投資ファンドによるミニバブルが発生した当時、高値で物件を購入しようとしていた担当者(友人?)に価格の根拠を聞いたことがある。その答えは「賃料相場が上昇し、市場のCapRateも更に低下するはずだ。そうすれば大きなキャピタルゲインが見込めるため、高い水準の期待IRRを達成できる」というものであった。ちょっと聞くと尤もらしいような気もするが、地価高騰を期待した思惑買い以外のなにものでもない。こういう参加者が市場価格を形成しているのである。それを鑑定評価できるもっともらしい「的確な」収入予測と「適正かつ合理的な」割引率などあるのだろうか。表現が適切でないかもしれないが、女子高生向けの売れ筋商品を中年男の学者が論評しているようなものである。後から尤もらしい理屈は付けられるかもしれないが、いざというときに当る保証は何処にもない・・・。

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