境界(その1) 隣々(?)地からの越境
不動産の仲介をしていると様々な問題に直面することになる。取引の障害となるような事柄も多いが、一方で大変勉強になることも多い。そこで私が過去に経験した面白いケースについて紹介していこうと思う。
物件は賃貸アパート。客付けは後輩がやっていたが、彼は初心者だったため契約関係を指導してやってくれと上司から依頼があった。現場を見ると物件と隣地の民家の間には塀がなく、民家の炊事場にバラック小屋みたいな部分が増築されてこちら側に突き出している。この増築部分は見るからに怪しいが、ルーキーの担当者は特に調べておらず詳しい説明は受けられなかった。
後輩が取り出した公図で確認すると隣地との間には青地(里道or水路?)があることになっていた。青地と自分の土地の境界が明確でないため互いに青地に越境して適当に「共用」しているのだろう、と最初は想像した。これなら塀がないことも説明がつく。但し、この場合は官民査定の必要が生じるので面倒ではある。まあ後輩の教育にはなると気を取り直して、測量士に予備調査を依頼することにした。
測量士からの報告は少し予想外のものだった。①官民査定は実施済みで境界確認の印も全て揃っていた、②その図面に従って現況をチェックすると隣地所有者は青地を越えて当方にまで越境していることが判明した、とのことである。隣地からの越境というのはよくあることだが、隣接しない土地からの越境というのは聞いたことがない。
通常、越境状態を簡単に解消できない場合は、境界確認書を取り交わした上で再建築等の際に越境状態を解消する旨の念書を出させるのが一般的である。念書といっても気休めみたいなものだか、取り敢えず当方の土地利用に障害がなく、かつ越境していることに相手側の悪意がないと判断できれば、これは止むを得ない解決法といえる。
しかし本件では境界は既に確定しており、役所は再立会いは原則認めないため隣地ですらない当事者同士で立ち会っても余り意味はない。反面、国有地には時効取得が認められないため、越境状態を放置しても権利の主張をされる懸念はなく、再建築時に再度越境してこようとしても今度は役所へ通報すれば簡単に阻止できる。つまり上記の念書の内容は、何もしなくても担保されているわけである。
そこで上記内容を重要事項説明書に記載し、念書等は省略することとした。買主が理解のある人で、また本物件の駐車場利用に際して当方も青地部分を実質的に「越境利用」していたため、余り境界のことで「隣々地」とは事を荒立てないほうが良いとの判断であった。この解決策には異論のある人もいるとは思うが、かといって絶対的な正解というものもなさそうである。
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