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境界(その4) 擁壁がある場合の境界には注意 (続き)

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B.上段土地の擁壁の端が境界となるケース

大規模な造成地では滅多に見ないが、地主が土地を切り売りしていったような場所では意外に多く見られる。崖を避けて上段の平坦地部分を切り売りし、残地となった崖と谷間を後で一括処分するようなケースである。開発行為を逃れるために行われることが多いため、擁壁が既存不適格(極端な場合は不法造成)であることも多いので注意せねばならない。

直接扱った案件ではないが、次のような事例を見たことがある。物件は建物裏手が崖となっている谷間の倉庫。崖はかなりの急勾配で、しかも3種類の異なる擁壁工事がなされている。見るからに怪しい佇まいであり、開発行為の基準に適合する擁壁とは到底見えない。もし擁壁をやり直す必要が生じれば莫大な費用負担が発生するのは容易に推定できた。

そこで担当者が建物裏手に回って境界確認を行ったところ、擁壁の手前に立派な境界標を確認した(ケースAで言えば、本物件が下段の土地に該当)。本物件は現在の基準では開発行為の対象となるが、敷地に擁壁部分が含まれなければ当然ながら擁壁の再工事等は必要ない。すぐさま販売活動を開始し契約に至った。

ところが契約後に本測量を行ったところ重大な事実が発覚した。3種類の擁壁の内1つについては境界が崖の上にあったのである。ロッククライミングでもしないと登れない崖であるから当然下からでは境界標は見えない。その点は同情の余地があるが、このような特殊な物件については契約前に少なくとも仮測量くらいは実施しておくべきだった。開発のコストが大幅に上がり、当然ながら買主からクレームがついて大トラブルへと発展するところであった。

結論を言うと、本件は無事(?)合意解除となったそうである。幸か不幸か、上の問題を遥かに超える大きな瑕疵が見つかり仲介者の責任は問われずに済んだらしい。本件は単にアンラッキーだっただけだと思われる人もいるかもしれないが、何も起こらずに終わるほうがラッキーだと考えるべきである。怪しいと思われた内容について確認の手間を惜しむことの危険性を知るべきであろう。

C.擁壁の中間が境界となるケース

これは超イレギュラーケースのような気もするが、実際に遭遇したことがあるので一応ご紹介しておきたい。物件は大手が分譲した湘南の造成地。南傾の緩斜面で区画ごとの段差は30~40センチ程度、擁壁というより土留めに近い。現地調査を行ったところ、境界標は図のCのように設置されていた。

まあ擁壁というほどのものでもないので、隣接土地所有者で共同管理しなさいという意図のようである。その意図が正しいかは分からないが、ただ言えることは境界上に塀は建てられないという事実である。当時まだ新米だった私は悩んでしまった。

本物件は更地で、上段・下段の土地は既に家が建っている。上段の家は自分の敷地内に自己の負担で塀を設置していた。一方、下段の人は自己の負担で上の段(つまり本物件)に塀を建てていた。厳密に言えば、これは下段土地から本物件への明らかな「越境」である。しかし、わざわざ擁壁の下段に塀を建てるのは馬鹿げており、上段に建てるのが自然である。本件でも両者了解の上で塀を建てており、「越境」といっては下段の人がかわいそうである。

しかし何せ新米だった私は、「越境」用の固い文面の念書をもって下段の所有者を訪問した。予想通り文面についてクレームがあり、粘ってはみたものの柔らかい文書に書き換えさせられてしまった。何とか印鑑をもらえたのは幸運で、万一下手に拗らせていたらどうなったかと思うと冷や汗ものである。境界については教科書に載っていない様々なケースがあり、自分の頭で考えて臨機応変に対応せねばならないと考えさせられた事例である。

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