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境界(その3) 擁壁がある場合の境界には注意

仲介において地境に擁壁がある場合は特に注意を要する。裁判沙汰になるようなトラブルになるケースには擁壁がらみのものが多いように思われる。私が経験したいくつかのケースを踏まえて、擁壁がある場合の注意点をあげてみよう。

まず、擁壁と境界の位置関係には図のAからCのような3つのパターンがある。

A.下段の土地の擁壁基礎の末端が境界となるケース

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これが最も一般的な境界の決め方である。一定規模以上の造成地等では基本的にこうなっているケースが多い。上段の土地の地盤を支えるための擁壁であるのだから擁壁も上段土地に帰属するわけだ。
このケースで問題となるのは、地上に見えている擁壁の末端と地中にあるその基礎部分の末端では位置が異なることである。その差は最小でも数センチ、極端な場合は1メートル超にも及ぶ。擁壁直下に排水溝を設置しているような本格的なものを除けば、この地中部分の表面は下段の所有者が自己所有地と一体として「越境」利用しているケースが多い。境界確定作業において、この部分の所有権が上段にあることについて下段の所有者が納得しない可能性がある。

私が遭遇したケースでは,この「越境」部分に簡易物置が設置されていたことからトラブルとなった事例がある。地表の擁壁面と境界線が約1.5M乖離している珍しい事例で、下段所有者は境界については渋々同意したものの、物置の撤去を迫られて切れたらしい。途中から引継いだ案件であったため当初の経緯は不明だが、契約したものの境界確認書が貰えず残金決済ができない状態であった。私が着任した時には、弁護士立会いの下で強制執行専門業者を使って人力で物置を撤去する、という大事件に発展していた。

このような場合には境界確定は重要であるが、些細な越境について下段所有者と揉めることは余り意味がない。越境されている部分については上段所有者は現実的に利用できない上、上段土地の効率を高めるために擁壁を改良しようとすれば下段所有者の協力が不可欠だからである。さらに擁壁をつたっての下段土地への雨水の流入、落ち葉の落下等を考慮すれば、下段所有者を一方的に責めれる立場ではない。普通ならこんな無意味なトラブルを起こすことを買主は要求しないはずである。

実はこのトラブルは買主が転売目的であったことに起因していた。「越境」という瑕疵を強引に取り除こうしたわけである。都内の高級住宅地の代名詞とされる「田園調布ロータリー内」の超高額物件であったため、物件を完璧な状態にしたいとの気持ちも分からないではない。しかし些細な越境を解消するために重大な近隣トラブルを起こすのは本末転倒というしかない。ひょっとすると越境されていることをネタに購入価格を引き下げようとしていたのかもしれないが、今となっては真意は不明である。

これは重要事項説明が不十分であった典型的事例である。当面の越境状態を同意の上での売買であったなら事はもっと平穏に終わったと思われる。将来の建替え時に物置を少しずらすと言うのなら下段所有者もここまで態度を硬化させることは無かったであろう。往々にして買主が業者であると重要事項説明を簡単に済ませがちではあるが、エンドユーザーに対する場合と同様、常に細心の注意を払わねばならないことを教えられる事例である。

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