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借地・底地の「片割れ交換」の税務

借地人と地主の間で借地権と底地権の交換を行い、その一方が交換により完全所有権となった土地をすぐに売却してしまうことを俗に「片割れ交換」と呼ぶ。借地と底地の権利調整においてはポピュラーな手法ではある。しかし、具体的な税務の取扱い方法を説明できるかとなると、上手くできる人は意外に少ない。最後は税理士マターとはなろうが、不動産コンサルタィングと言うからには、少なくとも概略については顧客へ分かりやすく説明できる能力は必要であろう。

これを理解する上で最も重要かつ基本的なことは、「民法上の交換」と「税法上の交換」は全く別物である、ということだ。契約書の表題が「交換契約書」であろうが、登記原因が「交換」であろうが、交換特例の用件が満たされなければ税務上は単なる「譲渡(=売買)」として扱われる。仮に全ての用件を満たしていたとしても、特例を適用する旨を申告しなければ同じである。つまり税法上は全ての土地取引は「譲渡」であり、その中で特例の適用の申告があり、かつそれを税務署が認めた場合のみ「交換」となるのである。

そこで「固定資産の交換の特例」を具体的に見てみよう。(少し端折るが)交換の条件は次の4つである。

1. 交換譲渡資産と交換取得資産のいずれもが同種の固定資産であること
2. どちらも所有期間が1年超、かつ交換用に取得された資産でないこと
3. 交換差金が、そのいずれか多い方の価額の20%以内であること
4. 取得した資産を譲渡した資産と同一の用途に供すること

この場合、借地権と底地権は同種の資産とされる。通常の借地と底地であれば最初の2つの条件は満たすだろう。3番目の条件についても交換比率で調整されるのが普通で、むしろ交換差金が発生するケースの方が少ないと思われる。よって4番目の条件、すなわち売却しなければ特例の条件は満たすこととなる。

「片割れ交換」の場合、すぐ売却してしま方は4番目の条件を満たさない。その時に相手側(売らない方)が交換として認められるか疑問に思うのは当然である。しかし前述の税法の基本を考えれば答えは明らかとなる。売らない方は「交換」として申告し、売る方はそれをしないだけの話だ。基本は全て「譲渡」なのだから、「特例」の申告をせずに譲渡税を払うことは何ら問題はなという理屈である。

以上から「片割れ交換」によって土地を売る人の税務処理は次のようになる。(但し、借地人のケース)

1. 最初の「交換」時点
  借地権の一部を地主へ譲渡   → 長期譲渡A
  底地権の一部を取得

2. 「交換」後の土地売却
  残りの借地権を第3者に売却 → 長期譲渡B
  上で取得した底地権を売却  → 短期譲渡(但し、利益ゼロ)

長期譲渡Aの金額と短期譲渡の金額を実質的に同額(経費分は上乗せ)とすれば、短期譲渡の申告は必要となるが課税額はゼロである。その結果、申告上は長期譲渡Aと長期譲渡Bの2回に分かれても、税額は「交換」後の土地を単純に長期譲渡したのとほぼ同じこととなるのである。

ここまで説明できれば、後は税理士マターであろう。一つ注意することがあるとすれば、片割れ交換の場合は最初の交換契約書に金額を入れる必要が生じることである。譲渡税の申告には譲渡価額が必要となるからである。この金額を幾らに決めるかについては契約書作成までに税理士と十分協議しおく必要があろう。

余談ではあるが、交換契約書に金額を記載すると印紙税が高くなるため、売却しない方の当事者は嫌がることが多い。あまり早く相手側に言うと売却するのがミエミエとなるので考えものだが、うまいタイミングで切り出す必要はあるだろう。たいした金額ではないのだが、最後の最後になって思わぬトラブルに発展しては元も子もない。相手がゴネそうな場合は、売る方の側が印紙代を全部負担してやるくらいの腹の括り方が必要だろう。

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