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個人と企業とでは「不動産コンサルティング」は異なるか?

はじめに

「不動産を扱うという点では同じであるから相手が個人だろうが法人だろうが一緒だ」という人もいるが、実際に企業を相手とすると、個人に対して有効であったことが法人に対しては通用しないケースが結構ある。私も法人相手の仲介業務を始めた頃、税金がらみの話をしていて相手企業と話が噛み合わなくて困惑した経験がある。そこで今回は、土地を売却する際の個人と法人の税金に関する考え方の違いを題材として、個人と企業に対する不動産コンサルティングの違いについて述べたみたい。

法人はドンブリ勘定

個人の売買仲介では譲渡所得税についての知識が不可欠であり、セールスやコンサルの重要な武器となる。反面、譲渡所得税の勉強ばかりしていると、知らず知らずのうちに「税金を出来るだけ減らして手取額を増やすことがコンサルティングだ」という考え方が染み付きやすい。

一方、法人には譲渡所得税などという税項目自体がない。一応、それに対応した「土地重課制度」というのがあるが、バブル崩壊以降大幅に簡素化された上、その簡素化されたものさえ現在停止中とあっては殆ど無いに等しい状態だ。コンサルで税を前面に出したくても、肝心の税がないのである。

つまり、個人コンサルの有力な切り口である「譲渡所得税に関する話」は法人に関しては通用しないわけだ。それでも未練がましく(?)法人税額控除後の予想手取り額を提示する人もいるが、悲しいかな企業が興味を持ってくれる可能性は殆ど無い。本気でコンサルィングをしたいのであれば、発想の転換をして別のアプローチの方法を見つけねばならない。

税務署的発想を捨てよう

税金の本は税務署出身者や税理士、言い換えれば「税金を取る側の人」が書いたものである。経済活動と税制は表裏一体であるとすれば、彼らとは反対の見方も存在するはずである。細かい税法のことは取り敢えず横に置いておき、もっと税金を払う側の立場で考え直してみる必要がある。

まず個人のケースから見てみよう。個人が土地を譲渡する場合、特殊なケースを除いて他の所得との損益通算は認められない。いくら利益が出ようが、譲渡所得税を通じて手取額が変化するだけである。つまり譲渡所得税とは、売主にとっては「現金化のためのコスト」なのである。個人のクライアントが税金の話に耳を傾けるのは、それが最大かつ(対応次第で)大幅に増減するコストだからなのである。

これに対し、法人はほぼ完全な「ドンブリ勘定」であり、また個人のように「現金化のためのコスト」となる譲渡税は存在しない。「含み益」が「実現益」となって「ドンブリ勘定」に放り込まれるだけである。それなら答えは簡単、企業が関心を持つとすれば、それは税金の問題などではなく「実現した含み益をどう経営に役立てるか」という問題である。当然、コンサルティングの核心もこの問題とならざるを得ない。

企業にとって利益は悪ではない

個人仲介の世界に長くいると、譲渡益は譲渡所得税という「コスト」を生むことから、なんとなく「利益は悪」であるとの感覚を持ってしまいがちだ。しかし企業にとっては本質的に「利益は善」である。もし悪となるとすれば、これは実現益を活用できなかった経営の問題である。

ある程度の利益が確保できないと思い切った経営改善を行うことは不可能だ。不良在庫や遊休資産の処理、拠点のスクラップ&ビルド等のような事業のリストラは勿論、新規事業を立ち上げる際にも、どこかで利益を確保しておく必要がある。事実、10年ほど前に新会計基準が導入された際には大企業も大規模な益出しを行う必要が生じた。その際「不動産の証券化」がコンサルされ、爆発的な不動産証券化ブームの呼び水となったことは記憶に新しい。

「実現益をどう経営に役立てるか」と考えている企業へ「利益が上がると税負担が増えて損だ」というスタンスで対応しても話が噛み合うわけがないのは自明であろう。企業が不動産を処分する意図や目的を正確に理解した上で、それに必要なスキーム、スケジューリング、リスク管理等についてプロとしてのアドバイスを行うことが企業が求めるコンサルティングなのである。

企業のニーズを把握できるかが鍵

ここまで譲渡所得税を題材として法人と個人の考え方の違いについて述べてみたが、「こんなことは不動産コンサルティングの対象ではない」、或いは「不動産会社にそんなものは求められていない」と言う人もいるかもしれない。しかし「相手のニーズを的確に把握する」というのは当たり前のことではないだろうか。個人に対しては「売却の動機」や「今後の方向性」を執拗に(?)ヒアリングするのに、企業に対しては相手のニーズすら把握できなくても良いというのは筋が通るまい。企業に対して偉そうに経営指南をする必要は全くないが、仮にも「コンサルティング」というからには、少なくとも企業と対等に会話できるだけの知識と見識が必要であろう。

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