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相続税増税(4)  居住用宅地と事業用宅地の「完全併用」?

前回、居住用宅地と事業用宅地の「完全併用」により小規模宅地特例の最大適用面積が730㎡になるとの説について疑問があると述べた。ここでは何故疑問に感じたかの理由について具体例を用いて述べることとしよう。

土地の相続人は配偶者(事業継承せず)と子(事業継承者、別居、生計は別)の2人とする。
現行の小規模宅地特例の計算方法を用い、小規模宅地特例が「完全併用」により最大730㎡まで適用可能とする。

ケースA

併用住宅(自宅兼店舗) 200㎡
路線価 600千円/㎡ 評価額 120百万円

Heiyo

この場合、配偶者と子で1/2共有で相続すると特例対象は赤枠内のAとDのみ。
評価額は、120百万-(120百万×50%×80%)=72百万 

ケースB

店舗400㎡ → 路線価600千円/㎡ 評価額240百万円
居宅330㎡ → 路線価303千円/㎡ 評価額100百万円
店舗を子、居宅を配偶者が相続。よって全体が特例対象となる。

評価額は、(240百万+100百万)×20%=68百万 

このように単純に「完全併用」を認めるとケースAの方がケースBより評価額が高くなってしまう。常識的に考えてこれはオカシイだろう。「小規模宅地」の名が泣くというものだ。

ここでもう一度税制改正大綱の文を見てみよう。

② 特例の対象として選択する宅地等の全てが特定事業用等宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能とする。なお、貸付事業用宅地等を選択する場合における適用対象面積の計算については、現行どおり、調整を行うこととする。

実は2世帯住宅の計算についても上の例と同様な矛盾が生じるケースがあったが、この条文に続く③はそれを解消するものである(→前回の本ブログ参照)。その文脈で②を解釈すると、②は上図のBとCの部分を特例対象とするための条文である方が自然ではないだろうか。これなら少なくとも上のような評価額の逆転現象は回避されることになる。

報道によれば、税制改正大綱の取りまとめにおいて「完全併用」の導入を強く推す声があったようであるが、この「完全併用」というのは確かに取って付けた感が否めない。少なくとも平成22年の小規模宅地特例の計算方法の変更と整合性がないのは明らかであり、ひょっとすると税制改正大綱の文章が「意味不明」になってしまったのもこれが原因かもしれない。

平成22年改正による小規模宅地特例の計算方法の変更は特例の適用条件を厳しくして実質的に相続財産の評価額を引き上げることを目的としていた。それに今回の基礎控除引き下げを加わえることで課税対象者を増やすというのが税務当局の筋書きであった筈である。しかし今回の特例の面積制限緩和は明らかにこの流れに矛盾しており、比較的不動産を多く所有している「中」以上の資産家にとっては特例による控除額の上乗せが基礎控除額の減少を上回って実質減税となる可能性すら生じてしまう。

以上のような問題を考慮すると、今回の税制改正大綱は十分な検討を経て作られたものではないのではないか、という疑念を持たざるを得ない。今後、「完全併用」について税務当局がどのような具体的取扱をするのか注視する必要があろう。

(追記)前の記事の追記でも書いたが、今回の小規模宅地特例の改正については財務省は妙に「柔軟」である。2世帯住宅に対する気前のよさを見ると、特定事業用部分を含む併用住宅についても「柔軟」な扱いとなり、この記事のような面倒な心配は不要となる可能性もありそうな・・・・

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