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相続税増税(2)  「富裕層増税」なのか?

相続税の税率見直しは「大富裕層」に厳しい?

税制改正についての新聞記事を見ると、今回の相続税改正は「富裕層増税」だそうである。

今回、基礎控除の引き下げにより都市部のごく普通の一戸建て所有者にも課税される可能性が高まったが、これを「富裕層増税」というのには抵抗がある人は多いのではないだろうか。(社会全体でみれば言えなくもないが・・・)

これに対し相続税の最高税率の引き上げは明らかな「富裕層増税」のように見える。確かに相続財産6億円超の税率が引き上げられたのだから、マスコミがこれを見て大資産家を対象とした「富裕層増税」と書くのも無理はないのだが、相続税改正の歴史を考慮すると事実はそれほど単純ではない。



相続税制の歴史

相続税の改正が頻繁に実施されるようになったのは昭和62年のバブル期からである。それ以降、昭和63年、平成4年、6年、15年と改正が実施され、その間の改正はすべて税負担の軽減を図るものだったが、今回は増税となる。そこで各税制に基づく相続税負担を比較してみよう。

単純化のために小規模宅地の特例の効果や不動産価格の変動は無視することとする。
1次相続で子が2人と仮定して、基礎控除実施前の相続財産が20億、10億、5億、3億、1億のケースを時系列で比較してみよう。なお、配偶者控除は法定相続割合で受けたものとする。

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このグラフから明らかなように昭和63年以降の相続税改正で最大の恩恵を受けたのは「大」富裕層である。元々それが目的で税制改正を行ったのだから驚く必要はないが、バブル当時に流行した相続税対策が不要となるほどの減税である。今回の改正では増税となるが、これまでの減税規模と比べれば大した増税ではない。

こう書くと、「相続財産が大きければ減税額も大きくなるのは当たり前だ」との反論を受けるかもしれない。そこで比率の推移も見てみることにしよう。ここでは、課税額を基礎控除実施前の相続財産で割ったものを「課税率」とする。

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各相続財産額に応じた課税率は似たようなパターンとなる。ある意味で「平等」と言えるが、税率が引き上げられた「大」富裕層と税率に変化のない「小」富裕層が同じパターンというのはどう解釈すべきだろう。そこで、基礎控除の引き下げのみが行われて税率改正がなかった場合の課税率のグラフを見てみよう。

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これを見ると「小」富裕層ばかり課税強化されている。これは基礎控除の減額が「富裕層」の中では「逆進的」に作用するからである。つまり「大」富裕層の税率引き上げはバランスを取るためのものに過ぎず、「大」富裕層への課税を特に強化したわけではないのである。

平成22年の小規模宅地特例の改正と今回の税制改正は相続税の税収アップを図ったものである。昭和63年以降の相続税軽減の流れを逆転させるわけだが、平成22年の小規模宅地特例の改正内容も勘案すれば「小」富裕層には大幅な揺り戻しであるのに対して「大」富裕層のそれはごく限定的といえる。
マスコミは最高税率引き上げに惑わされて「富裕層増税」と書くが、本来は都市部の戸建住宅所有者を狙い撃ちした「小」富裕層増税というべきであろう。

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