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相続税増税(3)  小規模宅地特例について

平成22年の小規模宅地の特例の改正は、特例の適用条件を厳しくすることによって実質的な相続税増税を図ったものである。税務当局としては「計算方法の厳格化により1次相続時に課税回避的な遺産分割を行うのを防ぐ」と言うのが大義名分だったように思うが、その結果として計算方法が複雑になり過ぎて別の問題が生じてしまったことは以前指摘した通りである。

    速算相続税2011 ~その2  を参照

現状はまだ基礎控除が高く設定されているのであまり社会問題化していないが、平成22年から相続税の申告漏れが急増しているのは本件も関係しているのではと推察される。このまま基礎控除が減額されれば大変なことになるのではと懸念していたところ、さすがに今回の税制改正大綱には幾つかの修正点が盛り込まれている。但し、これがなんとも分かりにくい表現なので、以下で私なりの解釈を加えてみようと思う。

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例についての見直し

① 特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積を330 ㎡(現行 240 ㎡)までの部分に拡充する。

相続税の負担軽減措置には違いないのだか、正直なところ私には少し違和感がある。例えば、200㎡の自宅土地を配偶者と子(別居、生計別)が折半で相続した場合、従来なら全体が特例対象となったものを配偶者の相続する部分のみに限定させられたことで実質増税となったわけである。つまり特例対象面積の枠内であっても部分的にしか適用できないように制度を変えたのに、今度は枠自体を拡充されても使えないのは同じである。この修正でメリットがあるのは自宅敷地が十分に広く、以前から相続税対象となっていたような人であろう。この時期にそのような人だけを優遇する理由が良く分からないのだが・・・

② 特例の対象として選択する宅地等の全てが特定事業用等宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能とする。なお、貸付事業用宅地等を選択する場合における適用対象面積の計算については、現行どおり、調整を行うこととする。

これは何とも分かりにくい文章で、推測でコメントする他ない。ここだけ読んだ場合、複数の特例対象についての(調整後)制限面積が400㎡から最大730㎡に拡大するのか、それとも制限面積が400㎡の範囲内で特定居住用宅地等についての調整を不要とするのか、そのどちらなのか明確でない。
正直に言うと、私は不覚にも税制改正大綱前文に「居住用宅地と事業用宅地の完全併用を可能とする等の拡充を行う」との記載があったのを読み飛ばしてしまい、上の後者の解釈をしていた。後からネットで見ると、この文言をもって特例面積が最大730㎡に拡大されるとの記事が溢れているので驚いた。偉い先生がそう言うのだから正しいのかもしれないが、正直に言ってそれが事実なら大きな違和感をも持たざるを得ない。その理由は少々長くなるので、次回に具体例を用いて改めて解説することとしよう。

③ 一棟の二世帯住宅で構造上区分のあるものについて、被相続人及びその親族が各独立部分に居住していた場合には、その親族が相続又は遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人及びその親族が居住していた部分に対応する部分を特例の対象とする。

これは良い修正のようである。速算相続税2011~その2 で指摘したように現行制度では2世帯住宅が不利となっていたのが改善されると思われる。ただ留意すべきは被相続人と2世帯住宅居住の親族が「同居」扱いになったという表現ではないことである。「同居」扱いとならなければ生計が別の「別居」親族は特例の対象外で、本修正内容は配偶者等の「同居」親族が相続する際に2世帯住宅全体の敷地に対して特例の効果が及ぶというこだけである。つまり被相続人の専用住宅のケースと同レベルの扱いになっただけで、2世帯住宅が特に優遇される訳ではない。

(追記)平成25年3月に財務省が発行したパンフレットによれば2世帯住宅は同居扱いとなるそうだ。私の国語力不足かもしれないが、上の条文から読み取ることは無理というものだろう。ただ税制としては分かりやすくなったのは事実である。現行税制に対して大幅な軽減となり、冒頭で示した例と比較すると軽減割合は20%→80%となる。極端な気がしないでもないが、そもそも平成22年改正が非常識だったというべきかもしれない。

なんとも分かりにくい文章となってしまい恐縮だが、現行税制がそうなっているのでご勘弁願うほかない。そもそも平成22年改正による2世帯住宅の小規模宅地特例の計算方法があまりに複雑すぎたのである。たとえ税理論上は合理的な計算方法だったとしても、その計算結果が納税者の常識とかけ離れてしまったのでは本末転倒と言わざるを得ない。
なお、本件については建築会社も苦労したようで「玄関を1つにする」とか「建物内に連結部を設ける」とかで頭を悩ませていたらしいが、この修正により結果的に梯子をはずされた形となって困っている担当者もいるかもしれない・・・・

④ 老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等は、次の要件が満たされる場合に限り、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして特例を適用する。
イ 被相続人に介護が必要なため入所したものであること。
ロ 当該家屋が貸付け等の用途に供されていないこと。

これは非常に良い修正である。介護施設に入所したら住民票を介護施設所在地に移すというのは保険事務の都合であって、これをもって「非居住」として税務上のペナルティを課されていたことの方が間違いなのである。従来は基礎控除に余裕があったので結果オーライのケースが多かったに過ぎない。もう少し詳しく説明すると、1次相続で被相続人が介護施設に入所していて「居住」が認められなくとも配偶者が居住していれば「生計が一つ」の親族の居宅となってOK、1次相続で配偶者の持分を圧縮して基礎控除の範囲内にすれば2次相続でもOK、となって結果オーライのケースが大多数だったのである。今後、基礎控除の引き下げで2次相続でも申告や納税が必要となるケースが多くなれば大きな問題となることは必至であったが、この修正が実現すればかなり解消するに違いない。(付け加えるなら2世帯住宅の「みなし同居」の認定についても非常にプラスとなるはずである)

以上、税制改正大綱に沿って私見を書かせてもらったが実際に施行されるかは不透明である。また細かい解釈についても税務当局に確認したわけではないので間違っている点があった場合はご容赦願いたい。

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