3.1 事業収支(基礎編)

6. 収支の基本バターン(RCの場合)

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ここまでの内容を踏まえて非常に単純化された収支モデルを組み立ててみましょう。

次の条件で計算を行って作成したのが上のグラフです。

賃料水準 投資額の8.5%と想定
賃料水準 20年間は一定、以後2年毎に1%下落
運営費用 全期間一定(投資額の2%)
減価償却 建物(70%)、設備(30%)ともに定額法
耐用年数 47年
借入額  投資金額の70%
借入条件 元利均等30年返済、金利は5%で固定
税金   30%の定率課税

このグラフを見ますと、11年目あたりから課税所得がプラスに転じ、設備の償却が終わった16年目で一段と増加します。21年目以降は実際の現金収入が減少しているにも拘らず尚も課税所得は増加し続けます。このため税負担がさらに増加して、ローン完済時期の直前になるとキャッシュフローが殆ど食われてしまっています。

実は、これがRC系の賃貸ビル・マンションの基本的な収支パターンなのです。

実際の収支は様々な要因が関係していますが、このパターンと比較することによって、それらの諸要因が収支に与える効果を具体的ににイメージすることが出来ます。例えば、現在は低金利ですから全体的にキャッシュフローが厚くなりますが、後年度に金利が大幅に上がれば又このグラフのパターンに戻る、といった具合です。

更にこのグラフが持つ本当の意味は、元利均等返済方式を用いる限り、賃貸事業自体にローンの返済期限が近づくにつれキャッシュフローが圧迫されるというメカニズムが必然的に組込まれている、ということです。

このメカニズムを理解しているか否かが、コンサルティングを行う上で決定的に重要となります。これを正しく理解していれば、相談者の話から現状を正確に把握し、近い将来何が問題となるかを指摘し、的確なアドバイスを行うことが出来ます。一方、全く理解していなければコンサルティングを行うこと自体が不可能です。

賃貸ビル・マンションのオーナーの悩みの多くはこのメカニズムに起因しています。新築から10年間くらいの間は殆ど税金も掛からずに現金が潤沢に入ってくるのに対して、途中から収入は減っていくのに税金だけは毎年増えていき、更に建物の補修の問題まででてくるわけですから悩みが増えて当然です。

そこで次回からは、このメカニズムをより一層理解していただくため、様々なケースについてグラフを用いてご説明していくこととします

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5. 費用(償却費+金利)の推移

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このグラフは、設備を定額償却、ローンを元利均等返済として償却費と金利を合算したものです。金利は一定と仮定していますので現金支出(=元利均等返済額)も一定となりますが、税務上の費用はこのグラフのように大幅に変動します。設備を定率法で償却する場合は更に変動幅が大きくなります。

このケースでは当初15年間は費用(償却費+金利)が現金支出を上回り、16年目に逆転して以降は費用が急激に減少しています。

ここで注目すべきことは、単純にローンを組んで建物を減価償却していくだけでも税務上の費用は大きく変化するということです。これが事業収支を理解するための最も重要なポイントとなります。

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4. 返済方法

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ローンの返済方法には元利金等返済方式と元金均等返済方式があります。個人の方はローンと言えば元利金等返済をイメージされると思いますが、法人の長期借入においては元金均等返済が一般的です。

元利金等返済は返済期間を通じて返済額が平準化されるため元金均等返済と比べて当初返済額が低く抑えられます。これにより賃貸事業では初年度からキャッシュフローを確保できるというメリットがあります。しかし見方を変えれば元金返済を先送りしているわけですから、後年度は元金均等返済に比べて返済額が大きくなり、かつ金利上昇の影響も受けやすいというデメリットがあります。

一方、元金均等返済は元金返済が早く進むので金利上昇の影響を受けにくく、また元利均等返済と比べて後年度の返済額が抑えられるメリットがあります。但し賃貸事業では当初返済額が大きくなるため初年度キャッシュフローを確保しにくいというデメリットがあります。

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3.減価償却 設備→定率法

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設備を定率法で償却する場合は、定額法の際と同様に計算すると初年度の償却額は設備だけで5.01となり、建物と合わせた初年度減価償却額は6.50です。2年目以降は上のグラフのように償却額は急激に減少しますが、平成19年の新しい減価償却法により10年目から15年目まではフラットになります。

初年度に償却費だけで建築費の6.5%相当額を計上するわけですから、金利負担も考慮すれば当初の1~2年はまず税務上は赤字となるでしょう。他に所得があれば大きな節税効果が得られますが、後年度の税負担が重くなることは言うまでもありません。

遡って平成10年の税制改正により建物の耐用年数の短縮と建物の償却方法を定額法に限ることがセットで決まりました。確かに建物の耐用年数は短縮されましたが、それまでは殆どの人や会社が建物と設備の両方を定率法で償却していましたので、結果としては新築当初10年間の減価償却費は大幅に減少することとなりました。平成10年以前は前述の節税メリットを7~10年間ほども享受できましたが、現在のように設備だけを定率法で償却しても効果はごく短期間となってしまったわけです。

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2.減価償却 設備→定額法

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まず減価償却費について検討します。
減価償却費は現金の支出を伴わない費用です。建物は定額法と決められていますが、設備は定額法と定率法から選択できます。建物と設備の割合は物件により異なりますが、ここでは単純化のため建物70%、設備30%とし、建物の耐用年数47年、設備の耐用年数は15年と仮定します。

このグラフは建物、設備ともに定額法を採用した場合の減価償却費の推移です。設備は建物に比べて少額ですが、耐用年数が短いため年間の償却額は大きくなります。全体を100とすれば、

建物 70÷47=1.49
設備 30÷15=2.00    となるわけです。

グラフでは16年目に償却額が一挙に減少しています。実際には設備にも5年、10年というように耐用年数が異なるものがありますので設備の償却額は幾分階段状になりますが、やはり16年目に償却額が大幅に減少することにかわりありません。

耐用年数が22年、27年と比較的短い木造やプレハブ造の場合は、償却額を均等にする意味で設備を分けずに建物と一体としてして償却するケースも多いようです

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1. はじめに

今まで複数の賃貸事業収支ソフトを開発しましたが、ソフトに付属するマニュアルはどうしても操作方法や計算機能の説明になってしまいます。そこで今回は事業収支の計算結果をどのようにして実際のセールスやコンサルティングに結び付けていくかについてご説明しようと思います。

事業収支計算書(または事業計画書)は一般的に、建物計画(当初予算&運営コスト)、賃貸計画、資金計画、採算検討の4つの部分から構成されます。前の3つは計画実施までにほぼ確定でき、また短期的な採算についても慎重に準備すればある程度までは固めることができます。但し、長期的な事業採算についてはあくまで予測にすぎず、まして20年、30年先の採算を正確に予測することは不可能です。
このため事業計画書に長期の収支予測を付けていても、実際には殆ど説明していないケースが多くみられます。

しかしながら、私の経験から言って、この長期の収支予測を上手に説明できればオーナーに対して様々なコンサルティングを行う切り口を作ることができます。

将来の金利水準や賃料水準を正確に予測する必要はありません。
オーナーが本当に求めているのは長期的な賃貸経営コンサルティングなのです。

そこで次回からその方法を順を追ってご説明していこうと思います。

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