3.2 事業収支(応用編)

7. 収支パターン (バブル期 ③ゼロ金利政策)

P7

これは前回の前提条件から9年目に金利が5%→3%へ下落し、更に16年目から賃料が下げ止まったと仮定したものです。(この設定は平成8年からのゼロ金利政策、平成16年以降の東京のミニバブルをイメージしたものですが、必ずしも厳密なものではありません)

このグラフを見ると、金利の下落により当面キャッシュフローは確保されています。今後の税負担は増加していきますが、これは言い換えると「決算が黒字化」しているわけで、一時期のような金融機関の「貸し剥し」のリスクも大幅に緩和されます。但し、本質的に事業の採算性が向上したわけではありませんので、もし金利が上昇すると前回指摘したリスクが顕在化することは言うまでもありません。

このような「小康状態」にある物件は、実は世の中に多数残っています。また、一定規模以上の賃貸事業を営んでいる人であれば、このような物件の1つや2つは現在も所有しているか、もしくは過去に処理した経験をお持ちです。そのような方へコンルティングを行う場合は、これまで解説してきた一連の収支パターンを頭の中でイメージしていただければ、より的確なアドバイスが可能になると思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

6. 収支パターン (バブル期 ②崩壊直後)

P6

これは前回の「賃料は半永久的に右肩上りで上昇する」という仮定をはずし、逆に「6年目から下落する」と仮定したものです。

(実際には最初の1回位は賃料引上げが出来たケースや、逆にバブル期に着工しても竣工時点では既にバブルが弾けていて最初から計画した賃料がとれなかったケースもあります。また、短期的ではありますが日銀による「バブル潰し」の超高金利時代もありました。ただ、ここでは説明を分かりやすくするため、上の仮定のみグラフに反映させることにしています)

さて、単に「半永久的に賃料が上昇する」という仮定をはずしただけで、収支パターンは目も当てられない状況となります。このグラフは、当初わずかに残ったプラス部分も賃料下落により消失し、更に後年度は税負担も発生して完全な持ち出しとなることが予想されます。

こうなってしまったのはバブル時代の建築費が高すぎたことが最大の理由です。仮に現在の建築単価で再評価すれば、当時の賃貸事業は多額の余分な債務を抱えてていることになります。この余分な借入は返済のためのキャツシュフローの裏付けもないと言う意味で一種の「不良債権」といえるかと思います。

このグラフは金利5%で計算されていますが、ちょうど平成5年当時がこの水準にありました。このグラフで言えば6年目以降の賃料下落局面に当ります。なんとかバブル崩壊直後の混乱を乗り切ったものの、将来に希望が見出せないという当時の悲観的な状況がこのグラフに反映されています。しかし、この後に超低金利時代の到来という「神風」が吹いて、収支はある程度改善されていくことになります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

5. 収支パターン (バブル期 ①当初計画)

P5

今度はバブル期に建てられたビル・マンション等について、この収支パターンのグラフを使って分析してみましょう。

建物の仕様も違うので正確な数字ではありませんが、バブルのピーク時をバブル崩壊後のボトム期と比べると、感覚的には建築費が5割程度は高かったような気がします。賃料が同じだとすれば、建築費が高くなれば単純利回りは下がります。当時RCで賃貸マンションの企画をたてると、金利も現在より高目だったこともあり、30年ローンで初年度は殆どキャッシュフローは確保できませんでした。

そのため、当初3年から5年の間はローンの元金返済を据え置き、その間に賃料が上昇するのを待って元金返済を開始するというような契約が多くみられました。今考えると恐ろしい話ですが、当時はこれが当たり前だったのです。

上のグラフは当時の「事業計画」に基づく収支パターンをグラフにしたものです。複雑になるので元金据置期間は設定していませんし、また当時の税法と少し異なる計算をしていますが、基本的な収支のイメージはこのようなものです。これは賃料が半永久的に右肩上りで上昇することを前提としていますので、「当初の採算さえ合えば後はどうとでもなる」というような考え方でした。

このケースでも税負担がキャッシュフローを圧迫するメカニズムは働きますが、当時は殆ど誰も気にも掛けていませんでした。建物の減価償却による当面の節税効果の方は重視しても、15年も20年も先の税負担など気にするような雰囲気ではなかったわけです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

4. 収支パターン(金利上昇)

P4

これは前回の続きで11年目に金利が3%→5%へ上昇するケースです。
金利上昇時に元利返済額が再計算されますので、当然ながらキャッシュフローは減少します。課税所得も一旦減少しますが、その後は例のメカニズムが働いて右肩上りに増加してキャッシュフローを圧迫していきます。金利上昇幅が大きいほど11年目の下方への段差が大きくなり、このモデルでは金利が6.5%を超えると30年目のキャシュフローが赤字となります。

このグラフでは30年目も一応キャッシュフローは黒字となっていますが、これが黒字だから良いというものではありません。。初年度から通して見た場合、キャッシュフローの減り方は金利を5%で固定した場合よりも大きいわけで、オーナーにとっては耐え難いものかもしれないのです。

ここで学んでいただきたいのは、金利の変化が収支に与える「段差(或いは断層?)」のイメージです。今のような超低金利時代では、いい加減なプランでも計算上は収支が回ってしまいます。もし変動金利方式や、一定期間経過後に金利見直しを行う契約であるならば、その時点でどの程度の「段差」に耐えられるかを予め検討しておく必要があるでしょう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

3. 収支パターン(超低金利)

P3

現在のような超低金利下での収支パターンを見てみましょう。
RCのケースで金利を5%→3%として、他は同条件としています。この場合は30年目に近づいても取り敢えずキャツシュフローの心配はありません。一方、当初から課税所得もプラスとなるので節税効果はあまり期待できなくなります。節税効果は、設備を定率償却にしたとしても当初2~3年しか期待できないと思われます。

このように超低金利下であれば、将来的に資金繰りで苦しむ可能性は低くなります。この場合、採算面の詰めが甘くなりがちですので注意してください。

特に、変動金利でローンを借入れた人は十分な検討が必要です。一見して採算が良さそうでも、金利が上昇した場合に一転して不採算となることも有り得ます。特に、これから建築する人は建築費高騰の影響を受けますので、より慎重な検討を行わねばなりません。(次回へ続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2. 収支パターン(プレハブの場合)

P2p_2

今回は、比較的耐用年数が短い建物としてプレハブのケースを検討してみましょう。

上のグラフは、建物と設備を一体として27年の定額償却、ローンを26年の元利均等返済とし、その他の条件はRCの場合と同じと仮定しています。
RCの場合と比較すると、ローン返済期間内の税負担が小さいことがはっきり分かります。これは、RCの場合は耐用年数より借入期間が短いため、借入期間内に十分な減価償却ができないのに対し、アパートでは返済期間内にほぼ全額を償却できるためです。その代わり、減価償却が完了した後の税負担は当然ながらアパートの方が高くなっています。

なお、借入期間が短いということで単年度のキャッシュフローは圧迫されますが、全期間を通じての金利負担は小さくなり、借入期間を通じた総キャッシュフローは増加します。(但し、これは総投資額を同額とした場合です)
これから、プレハブや木造のように比較的耐用年数の短い建物については、前述のキャッシュフローを圧迫するメカニズムは余り影響しないと言えるでしょう。(但し、プレハブや木造でも敢えて設備を分けて定率で償却すれば、程度の差こそあれ後年度のキャッシュフローが圧迫されることは言うまでもありません)

一般的に同じ土地上のRCの賃貸マンションとアパートを比較した場合、アパートの方が単純利回り(賃料÷投資額)は高くなります。これは単位面積当りの賃料の比較ではマンションの方が高くても、アパートの方が建築坪単価が低く、かつ共用床面積の比率も低いため、建物効率を加味して計算するとアパートの方が利回りが高くなるためです。(但し、アパートは投資額自体が抑えられるので、土地の有効利用という観点からは効率が良いとは限りません)

このように同一の土地上の比較ではアパートとマンションの利回りは変えるべきなのでしょうが、ここでは収支のメカニズムを比較することが目的ですので、敢えて同一条件で試算することとしました。
また、借入期間を耐用年数の27年ではなく26年としたのは、新しい減価償却法では端数処理の関係で27年目の償却額が小さくなり、グラフでの説明に適しないと判断したためです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

1. 収支パターン(RC、元金均等返済)

P2 

事業収支のメカニズムをより理解するために、今回は元金均等返済でローンを組んだ場合の収支パターンをご説明します。
上のグラフは前回と同条件で、返済方法のみ元金均等返済へ変えた場合の収支パターンです。

若干の差異はあるものの、元利均等返済の場合と同様に課税所得は右肩上りとなりますが、キャッシュフローも右肩上りのトレンドとなっています。これは元金の減少に呼応して元利返済額(=現金支出)が減少していくためです。16年目に税負担の増加により一旦キヤッシュフローは減少しますが、翌年度からはまた漸増していきます。元利均等返済の右肩下りのパターンとは逆となるわけです。

一つ注意していただきたいのは、このグラフでは初年度から僅かながらもキャッシュフローがプラスとなっていますが、一般的にはマイナスとなるケースが多いことです。それ故、当面の賃料収入に期待する人には採用し難い返済方法と言えるでしょう。但し、複数の賃貸不動産を経営しており、かつ全体的な資金繰りが確保されている場合には有力な選択肢となります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)