3.3 事業収支(対策編)

7. 税金対策

税金対策は常に必要ですが、課税所得がキャッシュフローを大きく上回るようになると死活問題となってきます。資金繰りが圧迫されるのは勿論、実際の賃貸収入が目減りしているにも拘らず課税所得だけが増えていくのですから、竣工当初の税負担が極端に軽かった時期と比べるとオーナーにとっての重税感は大変なものとなります。

資金繰りを改善するための節税対策は、簡単に言えば、現金の支出が少なくて損金処理できる金額が大きいものです。端的な例としては、収益性の低い建物を解体し除却損を計上するという方法です。沿道サービス系の貸店舗(外食・物販等)が撤退し、既に投資額は回収されているが建物簿価だけは残っている、というようなケースがこれに当たります。

また、新規に建物を建築することも有力な手段です。設備は当然定率償却とし、諸費用についても出来るだけ初期コストが大きくなるよう会計処理することにより、数年間は課税ベースで赤字を計上することも可能です。

(新築時に施主から経費処理方法について細かい注文が付く場合は、他に税金対策を必要とする物件を保有している可能性が極めて高いと思われます。面倒がらずに誠意をもって対応すれば、貴重な情報や新たなビジネスチャンスが得られるかもしれません)

昔は建物躯体も定率法で減価償却することができましたので、当初10年間くらいはかなり多額の税務上の赤字を計上することが可能でした。これを利用して、次々に新しい不動産を取得することにより税金対策と資産形成を同時に達成することができました。勿論やりすぎて失敗したケースもありましたが、代表的な成功例としては西武グループや森ビル等をあげることが出来ます。

しかし今日では、節税により資金繰りを改善しようとするのには限界があります。同じ税金対策でも、相続対策用に管理会社を設立する等の方法は、かえって資金繰りを圧迫してしまいます。

私がコンサルティングを行う際には、資金繰り対策は原則として節税以外の方法(資産処分、借入条件変更etc.)を一番に考えるように勧めています。目先の節税対策にのみ汲々とすると、コンサルティングの幅を自ら狭めてしまいます。資金繰りさえ安定させることができれば、思い切った相続対策や資産のリストラを進めることも可能となりますし、怪しげな「節税商品」に引っ掛かるリスクも避けられると思います。

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6. 元利均等返済→元金均等返済

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これは私の提案なのですが、もし元利均等返済と元金均等返済を組み合わせた"ハイブリッド"型のローンがあれば、これが最も賃貸事業を安定させることができると思います。

借入期間  通算35年
当初20年 30年の元利均等計算に基づく返済額を適用
21年以降 20年目の残額に対して15年の元金均等返済

この条件に基づいて計算した収支パターンが上のグラフです。2つの返済方法の短所がカバーされており、後年度の修繕工事費に対する備えも万全だと思うのですがいかがでしょうか。このような「制度ローン」は現実にはありませんが、ローンを組み替えるチャンスがきた場合には、一つの参考にしていただければと思います。

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5. 35年ローンは得か?

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これは最近扱われるようになった35年ローンの収支パターンです。毎月返済額が抑えられるので全体としてキャッシュフローは厚くなりますが、長期的に圧迫されていくプロセスは変わりません。後年度の修繕工事費負担等を勘案すると必ずしも30年ローンよりも得だとは言えないでしょう。(少なくとも全期間の金利負担は必ず増えています)

35年にするメリットは当初のキャッシュフローが多くなることですが、これの使い道がはっきりしている場合には意味のある選択です。但し、現在のような低金利下で30年ローンではキャッシュフローが確保できないので35年にするというのなら、その計画自体の採算性をもう一度見直したほうが良いでしょう。

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4. ローン条件変更~②

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長期の住宅ローンやアパートローンは「制度ローン」といって借入条件が細かく規定されています。これに適応しないものは「一般融資」とか「一般貸付」と呼ばれ、個別に稟議承認が必要となります。

期間延長により「制度」に合わなくなると、新たな案件として稟議を出す必要があるわけです。但し、担当者としては面倒ですし、また「資金繰りが苦しい」というような理由では受けられません。そのため、借手側としても新規の融資案件や他行からの借換えなどと絡めるなどのテクニックを使うことが必要となるでしょう。

なお、「一般融資」については元金均等返済の方が一般的です。その場合の収支パターンが上のグラフです。前回と同条件で返済方法のみ変更しています。見ていただければお分かりのように、この時期になれば敢えて元利均等返済にこだわる理由はありません。むしろ元金均等返済の方がキャッシュフローは安定します。

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3. ローン条件変更~①

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元利均等返済方式では、ローン返済期限が近づくと経費処理できない元金返済部分の割合が大きくなり、結果的に税負担が増大します。住宅ローンであれば問題はありませんが、事業性ローンでは税負担の増加を伴うためキャッシュフローが圧迫されます。

上のグラフは30年ローンの23年目において、残存期間8年を10年に延長した場合の収支パターンです。僅か2年の延長ですが、キャッシュフローはかなり改善されます。当初借入時点で30年を32年にしても効果は小さいですが、8年→10年であれば期間が25%延長されたこととなるわけです。
但し、この場合は当然ながら金融機関の承認が必要となります。

現実的に金融機関との交渉においては、修繕工事(リニューアル工事)と絡める形での申込み、或いは他行への借換えという形でないと期間延長は難しいかもしれません。また、その場合でも金融機関が定めた「制度ローン」に該当しなくなる可能性が高く、それを理由に期間延長を拒絶される可能性があります。

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2.賃料収入の改善

こまで使用してきたモデルは非常に単純化されたものでしたので、賃料収入の減少イコール賃料水準の下落としていましたが、賃料収入の減少には稼働率の低下というもう一つの要因があります。。
稼働率の計算は次のような算式となります。

●総戸数10戸、年間の入退去を3戸とすれば

 1戸当り空室期間3ヶ月
   →(10×12-3×3)÷120=92.5%
 1戸当り空室期間4ヶ月
   →(10×12-3×5)÷120=87.5%

ここで空室期間とは募集期間ではなく賃料が受け取れない期間です。3ヶ月というのは結構長いと思われるかもしれませんが、「募集→入居者決定→契約→入居」までの期間としてはごく短い期間です。一般的には建物が老朽化すると募集期間が伸びる傾向にありますので、仮に賃料水準が下落しなくても賃料収入は低下することとなります。

また「募集が極端に難しい部屋(=デッドストック化した部屋)」が生じると、一気に稼働率が低下してしまいます。これは日照不足や結露、騒音等により入替え時の空室期間が極端に長くなる部屋が生じるケースです。周辺環境の変化により止むを得ない場合もありますが、設計により回避できることもありますので計画段階で十分な注意が必要です。

賃料収入の減少が始まった場合、取り敢えず賃貸募集・管理について内容の見直し、業者の変更等で対応することになりますが、根本的には建物のリニューアル(或いはリノベーション)により建物の競争力をアップする必要があります。但し、早期の建替えを前提に修繕等は最小限に留める方が有利なこともありますので、費用対効果について十分検討することが必要となります。

この件については「賃貸不動産リニューアル計画」_.pdf」をダウンロード というソフトがありますので、もしご興味のある方はご参照ください。

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1.事業収支を改善する方法

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基礎編、応用編において、返済方法や償却方法、金利変動等により収支パターンがどのように変化するかを見てきましたが、次にこれを活用した実際のコンサルティングの方法についてご説明したいと思います。

上のグラフは「基本編」の最後に使用した収支パターンです(但し、設備の償却方法は定率法にしています)。20年~30年の期間について、これを見れば何が問題となるかは明白です。

1. 収入(NOI)のラインが右肩下がり
2. 白い部分(ローンの元金返済)が急増
3. 灰色部分(税金)が増加

従って、当然ながら対策も以下の3つとなります

1. 賃料収入の下落に歯止めをかける
2. 借入条件の見直しを図る
3. 節税対策を講じる

次回からこの3つの対策についてご説明していきます

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